情報の危機 ―受信から発信へ―

                                   2012年3月3日
                                     清水 光幸

 「国境なき記者団」によると、日本の報道自由度は世界で22位である。(1/25時事通信) 日本には、他にはガボンとジンバブエにしかない官報談合クラブの「記者クラブ」が存在し、現在ではフリー記者も一部参加できるようになったが、今なお情報統制の存在することが大震災を機にさらに明らかになった。戦時下の大本営発表同様のことが、現在も続いているのである。

 3・11大震災と福島原発事故について、政府は米軍やIAEAには正確な情報を伝えていたが、日本国民にだけ知らせていなかった。(1/17NHK) ドイツ・フランスではIAEAからの日本気象庁のデータに基づいてSPEEDI情報が毎日公開され、インターネットや海外メディア経由で日本人も確認できた。関東一円には二度に渡って風が吹き、雨天であったときに通過した地域に放射性物質が多く降下したことがSPEEDIによって明らかになった。

関東の水道水からは一時期放射性物質が検出され、下水処理場の汚泥からも高濃度で検出されていたが、その汚泥が基準値まで加工され、肥料として全国のホームセンターなどで販売されていることはあまり報道されていない。(農水省ホームページ)

かつて大気圏内核実験が行われていた時期に比べて大した放射能ではないと発言する人もいたが、その時期(昭和38年)の一年分の約3倍のセシウムが、3月21・22日の一晩で東京に降下したことは一部で報道されただけだった(3/25産経)。その後、広島原爆100個分のセシウムが放出されたことを政府は認めた。

 福島原発のメルトダウンに至っては、全く心配ないという当初の発表から、完全に穴があきどの程度の核燃料がどこに存在しているかも正確に把握できていない状態で冷温停止状態と発表している有様である。

 ことごとく以上のように、今回の日本政府の情報については信用できない状態にある。米国大使館によると米国民の80キロ圏外への避難勧告は現在も続いている。もしも福島原発作業員が東電の申し出通りに全員退避したなら、東京・横浜を含む250キロ圏までが避難地域になり、東日本は壊滅状態になるという最悪シナリオがようやく発表された。(12/24) 現状のままで再び震災が起こったならば、最悪にならない保証はあるのだろうか。

 そもそも元朝日新聞記者であった緒方竹虎は、かつて米国CIAと情報交換しながら内閣情報調査室を設立し、読売新聞の正力松太郎はCIA関係者であり、日本テレビがその影響下で作られ、民社党もCIAの資金で作られたことは、CIAの情報公開で確認されている。日本のマスメディアは、誰のために存在してきたのか疑問だ。(参考「20世紀メディア研究所・特別研究会―CIAと緒方竹虎」2009/7/25 早稲田大学政治経済研究所)

 TPPに至っては、米国の一企業が販売営業の妨げになるような日本独自の安心安全規制に対して異議を唱え日本政府を訴えることができ、アメリカで裁判されることになっているのを、野田首相は知らなかったと答弁した。日本独自の厳しい安全規制が廃止され、アメリカ並の法律が施行されると、農業だけでなくあらゆる業界と国民生活に影響を及ぼすことになることをメディアも政府も伝えない。TPPがアメリカによる日本支配の総仕上げと言われる所以である。日本が米国から真に独立するため、○○新党が結成されて核武装の議論が行われ、政界再編となる日も近いかもしれない。

しかし「アラブの春」がネットメディアを通じて展開したように、日本でもネットを通じて海外から日本の情報を集め、一方だけでなく他方の情報にも接しながら判断する必要がある。また、一方的にマスメディアの情報を受信するだけでなく、1億総フリー記者のように草の根的な情報発信によって、日本と世界に変革をもたらすことも可能になりつつある。

 少子高齢化により票にならない若者の意見が尊重されず、税金が福祉等のサービスで再配分された結果、貧富の差がますます拡大するというあり得ない行政が日本では行われている。お金持ちの年寄りはサービスを受けてますますお金持ちになり、職にありつけない若者は税金や掛金を払ってますます貧しくなって経済格差を拡大しているのである。若い皆さんは、自分自身のため、そして将来の日本と世界のために、今こそ立ち上がって情報発信者にならなければならない。あらゆる問題について、携帯のカメラからライブで投稿し告発するという手段である。

 お釈迦様は、遺言として「自灯明・法灯明」と言われた。自分の判断をよりどころとし、法すなわち情報から得られる道理をよりどころとし導きの灯火として生きなさいとおっしゃった。情報は自らの責任で判断せねばならず、お釈迦様はお釈迦様の言葉を信じなさいとは言われなかった。自分(本来仏の心を持つ自分)を信じ法を信じ、そしてサンガ(僧=集いの力)を信じて行動するように勧められたのである。仏教の草の根民主主義とも言えよう。

これからの困難な時代に生きる皆さんが、自ら正しく見て正しく判断し正しく行動する八正道の精神にならい、自分にも他人にも厳しく優しく接して励まし、一隅を照らす人材としてとことん生き抜かれるよう心より願ってやみません。

卒業おめでとう!